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May 15, 2008

月と暮らす料理屋 

  ・・・その店を見つけるには、少しばかり直感力が必要かもしれない。

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東京から成田に向かう途中、ハイウェイを降りて
九十九里へと南下するその途中にその店はある。

「暖簾」とか「屋号」とか、
あるいは「看板」さへもみつからない。
手がかりは「今ぜき」というシンプルな文字と佇まい。


とにかく「食」だろうということを期待しながら、
白い麻の暖簾を分けて戸をあけてみる。

初めて通りがかりでこの店を見つけられたら、
運の良さと感度の良さを喜んでもいいのではないだろうか。
この世に偶然は無いということで。

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写真はおでんです。
一見、普通?

いえ、
ここで「普通」と言ってやりすごしてしまったら
あまりにも惜しい。

だから、ちょっとごたくを並べさせてもらいたい。

店主の説明にいちいち感動していると
「昔はあたりまえですから。」

あまらりにさらりとおっしゃる。

そりゃそうだ・・
けど・・。

だけど今はこれは「究極」である。

出汁はもちろん、、
練り物、ちくわ、鳥肉、野菜、調味料のひとつひとつが、
すべて正しい素材で出来ている。

そうだ、正しい!のだ。

まず遠方から取寄せたりしない。
地元で採れたものたち。

そして練り物は、それらの素材を使って
店主がすり鉢で練りあげて調理する。
大豆から豆腐をつくり、
揚げる油も、鶏肉も醤油も卵も野菜達もすべて
作った人の顔と心意気を知っている。

それにしても、
昔は素晴らしいものが日常の食卓に上がっていたものだ。
正しさの尺度なんて説明するほうが邪道だ。

ここで食べているとそんな気さへしてくる。
だいいち、
ここのメニューに「おでん」はない

メニューは参考に過ぎない。・・・・
と私は思っている。

店で料理を頼む為の作法か、
料理を待つ間の軽い読み物?
いや、素人のことらが料理を頼む為の手がかり?
遊び心に慣れない輩のためとか。

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時々、

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いきなりパスタやシチューを奨められ、一瞬言葉につまる。

純和風な店構えのその固定観念をはずせないこちらの頭の堅さを隠したくなる思いなど捨てないと損をすると思った。

ここだけの話----

メニューを手にしながら注文するときは、アンテナを高くしておくこと。

店主のさりげないサジェスチョンが
ひょっとしたらあるかもしれないから。
キャッチできたらそれはついてる。

ありふれた名前で来るけど、
とにかく一品はお願いすることをお勧めしたい。

(いや、するべきと思う。)

ちょっと迷うようならそのときは
メニューの下のほうに何気なくある「親子丼」は、
一度は食べておくように。
と言いたい。

きっと親子丼の枠が拡がることになるだろう。
卵の素性、醤油の素性、飯の素性等々が
ぎゅっとはいっている。

それこそが序章に過ぎなかったと二度めの訪問で知ることになり、
いつしかはるばるここまで
また来てしまう。

たとえば、

ある日、窓の障子が
めずらしく開けられていて、
窓の外にポンと投げ入れたように
桜の若木が一本。

桜が散ったばかりで、若葉が風にゆれている爽やかな日だった。

廊下を隔てた別の部屋には格子入りの窓があるけれど、
そこからかいま見える景色がまた風情があって私は好きなのだ。

店を出て、その桜の元に出てみれば、
なんと店主は月を愛でるためにだけに
何年もかけて構想を練っていたという。

坪庭ほどのそこを花器にみたて、
木は活けられた桜のようにしたててあった。

のぼったばかりの大きく丸い月。

中天高く煌々と照る月。

三日目の月の凛とした美しさ。

月の美しさは限りない・・・・

それだけではなく、
命のもっとも輝く時期を月の暦でよみとり料理し、
感謝していただく。
だから「美味しいと感じる」その心を思い出すというより、
むしろわかるように見せられているような感じさへする。

人の、
いや地球の生き物のリズムは太陽よりも、月に同調している。

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筍の旬には間に合わなかった私たち。
今年最後にするという筍の柔らかな穂先だけを使った贅沢な釜飯を作ってくれた。

筍が美味しいのは啓蟄(二十四節気の一つ。3月6日頃)から清明(4月5日頃)くらいまで。
つまり3月の始め頃から4月の始めくらいということだそうで、
「やぱり立夏になると豆が食べたくなる」と店主。
豆が食べたくなるからそろそろ立夏という感覚が生きている。(5月6日頃)

自然に、当たりまえにあるリズム。
五感。
知らないうちにどれだけ麻痺しているのだろう。

昇る月を観る日常。
青く輝く月明りの影。

この地球にいて、この日本にいて、
知らない子が増えているとしたら、それはやっぱりおかしいことだし、Kif_4170_2
伝える義務があるような気がしてならない。

美味しいものを口にしていると、
そんな気がした。

季節料理 今ぜき
千葉県八街市八街ほ33-29
 043-444-2383
(予約で確認した方がいいです。

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